こう見た!本が好き!2018年11月ランキング
不朽の名作『坊ちゃん』がなんと一位。すごい! 名作はいつの時代も変わらず読まれ続けているんですね……。上橋菜穂子さんや平野啓一郎さん、赤川次郎さんに至るまで、日本を代表するエンタメ作家さんたちの本がランクインしているのもすごいです。
三宅香帆の今月の1冊『ももこの70年代手帖』
書籍:『ももこの70年代手帖』
(さくらももこ/幻冬舎)
書籍詳細URL:https://www.honzuki.jp/book/188929/
選書理由
さくらももこさんの本は昔から大好きでよく読んでいたのですが、この本だけは読んだことがなかったので早速購入いたしました! 好きな作家さんのまだ読んでいない本を読めることに勝る幸せはありません。
ブックレビュー
『ちびまる子ちゃん』のことを知らない人はいないし、さくらももこのことを知らない人もいないと思うけど、ちびまる子ちゃんだった頃のさくらももこが生きていた70年代の日本を知らない人はたくさんいる。
かく言う私もそのひとりだ。「百恵ちゃん」も「ドリフターズ」も「キャンディーズ」も、『ちびまる子ちゃん』の中で覚えた。
だけど実際の70年代を、さくらももこはどう見ていたのか? ちびまる子ちゃんは「百恵ちゃん」を実際のところどう思っていたのか?
……そんな70年代文化についてゆる~く綴ったのが、本書。
「対談形式」なのに、これ実はさくら先生が会話を書き下ろしているという異色の本なのだ。
雰囲気はさながら深夜ラジオ、あるいは居酒屋での思い出話。
空気感はゆる~~~い。さくらももこさんのプロフィールに「気楽を何より重視し、気の重いことはできるかぎり避けるように心がけている」とわざわざ述べているがごとく、気楽な会話もといエッセイだ。
その会話のゆるさそのものが、70年代にあったゆるさというか寛容さに見えて、私たち平成世代から見ると少し眩しい。
だってたとえば私たちが大人になって平成について語ったとき、こんなに気楽に語れるかなァ……と思わざるをえない。
つまり、平成について思い出そうとしても、ちょっと震災とかテロとかに目が向いちゃって、こんなふうにゆるく語れる自信があまり、ない。
いつだって寛容な部分もあれば非寛容な部分もあるのが社会だと思うけれど、70年代の文化を見ることで、逆に「今」を考える手がかりになる。
さくらももこさんみたいな才能がすくすくと育っていった70年代。その時代にしかなかった空気感。「今じゃゆるされないよねぇ」と苦笑してしまうような文化たち。
平成が終わるにあたって、今一度それらを見直してみることで、もしかしたら、反射した私たちの平成が見えてくるのかも、しれない。
『ももこの70年代手帖』を読んだ人が次に読むべき本
『もものかんづめ』
書籍:『もものかんづめ』
(さくらももこ/集英社)
書籍詳細URL:https://www.honzuki.jp/book/63132/
〈おすすめポイント〉
さくらももこさんの文章は、やっぱりココから。教科書にも載せてほしい、もはや日本国民の古典とも言える大傑作エッセイ!
『対極と爆発 岡本太郎の宇宙1』
書籍:『対極と爆発 岡本太郎の宇宙1門』
(岡本太郎・筑摩書房)
書籍詳細URL:https://www.honzuki.jp/book/171345/
〈おすすめポイント〉
『ももこの70年代手帖』の中でもふれられていましたが、70年代は万博で始まったのです! 岡本太郎が万博について語ったエッセイや対談を所収した随筆集。
『対極と爆発 岡本太郎の宇宙1』について三宅さんの書評を読みたい!という方は、こちら。
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三宅香帆さんのプロフィール
1994年生まれ。高知県出身。
京都大学大学院人間・環境学研究科に在籍中。
大学院にて国文学を研究する傍ら、天狼院書店(京都天狼院)に開店時よりつとめた。
2016年、天狼院書店のウェブサイトに掲載した記事「
著書に外国文学から日本文学、漫画、人文書まで、
Twitter>@m3_myk
cakes>
わたしの咀嚼した本、味見して。
https://cakes.mu/series/3924
Blog>
https://m3myk.hatenablog.com/
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