翻訳者と話そう×本が好き! 翻訳家・和爾桃子の世界 第三回 【歴史はおいしい(たまに臭い)】ポール・ドハティ、ジェイソン・グッドウィン、ジャクリーン・ケアリー、アンドレア・ペンローズ

ジョン・ディクスン・カー「バンコランシリーズ」や白水Uブックスのサキ四部作など、翻訳家としてご活躍されている和爾桃子(わに ももこ)さんが、2018年3月3日、梅田蔦屋書店のトークイベント「翻訳者と話そう」に登場されます。

◆トークイベント「翻訳者と話そう 和爾桃子先生」
2018年3月3日(土)19:00〜 (開場18:30)
参加費 1,000円
会場:梅田 蔦屋書店 会議室Shimei(大阪府大阪市北区梅田3−1−3 ルクア イーレ)

ご予約は、梅田蔦屋書店さんのホームページから受付中です。関西方面にお住まいの方、この機会にぜひお運びください!
http://real.tsite.jp/umeda/event/2018/01/post-478.html
mail: umeda_event@ccc.co.jpinfo@sioribi.jp

■訳者のことばで読む

海外翻訳ファンも多い、本が好き!に向けて、和爾さん自身がこれまでに手掛けられた作品について、作品世界の魅力をご紹介いただきました。

第三回は、【歴史はおいしい(たまに臭い)】ポール・ドハティ、ジェイソン・グッドウィン、ジャクリーン・ケアリー、アンドレア・ペンローズと題し、歴史ミステリー、歴史ファンタジーを好む作家の作品について、その味わうべきポイントをお聞きしました。

霧の都に漂うミステリーの香り ポール・ドハティ

リバプール大学とオックスフォード大学で歴史を学び、博士号を取得、歴史教師でもあったイギリスの作家、ポール・ドハティ。そんな歴史のプロである、ドハティは、1985年に作家デビュー後、80冊以上の著作をもち、「修道士カドフェルシリーズ」のエリス・ピーターズ、「密偵ファルコシリーズ」のリンゼイ・デイヴィスとともに、歴史ミステリーの御三家と称されています。

『白薔薇と鎖』(早川書房)

ミック・ジャガー似(先祖?)のホラ吹き九十翁ロジャー・シャロットが語る、枯れない・懲りない英国史秘話。未訳の続巻に比べれば、まだ大人しいほうです。(和爾)

『教会の悪魔』(早川書房)

その三百年ほど前の、ひたすらシリアスで臭気漂う中世ロンドン。ドハティはオックスフォード出身の歴史小説家で、緻密な考証に大胆なひねりをきかせた語りが得意です。(和爾)

歴史の十字路、トルコは料理も奥深い! ジェイソン・グッドウィン

ケンブリッジ大学でビザンツ帝国について学んだイギリスの作家、ジェイソン・グッドウィン。『イスタンブールの群狼』は、19世紀のイスタンブールを舞台に、宦官(かんがん)ヤシムが活躍する歴史ミステリー。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を受賞し、シリーズ化されています。

『イスタンブールの群狼』(早川書房)


『イスタンブールの毒蛇』(早川書房)

オスマン末期、イスタンブールの下町に住む料理上手なイケメン宦官が主人公。おいしそうなトルコ料理が山ほど出てきます。フランス料理のベシャメルソースも、元はトルコ料理だそうです。(和爾)

甘いチョコレートの誘惑 アンドレア・ペンローズ

アンドレア・ペンローズは幼い頃から創作と歴史に興味を持ち、エール大学で美術を専攻したのち、ミステリー作家として活躍。イギリスの上流社会、華やかな文化が開花したリージェンシー(摂政時代)を舞台にした作品を手掛けています。

『スペシャリテには罠をひとさじ』(ヴィレッジブックス)

数学とチョコレート料理に強いカリブ海育ちの貴族令嬢が、父のかたき討ちにロンドンへ行き、社交界の異端児と知り合う。詳細レシピ付き。(和爾)

見た目と中身のギャップにときめく ジャクリーン・ケアリー

アメリカのファンタジー作家、ジャクリーン・ケアリー。作家を志し、10年の下積みを経て2001年にデビュー。彼女のデビュー作『クシエルの矢』は、英語圏のSF・ファンタジーを対象とした文学賞である、ローカス賞第一長編部門を受賞。『クシエルの矢』、『クシエルの使徒』、『クシエルの啓示』は、フェードル三部作で、続くイムリエル三部作、モイリン三部作と併せた壮大な歴史ファンタジー「クシエルの遺産」シリーズを成す。

『クシエルの矢〈1〉八天使の王国』(早川書房)

『クシエルの矢〈2〉蜘蛛たちの宮廷』(早川書房)

『クシエルの矢〈3〉森と狼の凍土』(早川書房)

『クシエルの使徒〈1〉深紅の衣』(早川書房)

『クシエルの使徒〈2〉白鳥の女王』(早川書房)

『クシエルの使徒〈3〉罪人たちの迷宮』(早川書房)

『クシエルの啓示〈1〉流浪の王子』(早川書房)

『クシエルの啓示〈2〉灼熱の聖地』(早川書房)

『クシエルの啓示〈3〉遙かなる道』(早川書房)

歴史ファンタジーですが、設定に古今東西の歴史を総動員。天使たちの血をひく美貌の国で、瞳に「クシエルの矢」のしるしを持つ特殊マゾ体質に生まれついた少女フェードルは貴族デローネイに見出され、権謀渦巻く宮廷で頭脳と性技を駆使して、愛するものを守ろうとします。外見こそ華奢な美女ですが、中身がこれだけ男前なヒロインはちょっといません。
スケールの大きな仮想歴史に、「自由意思の合意があれば、愛の形や対象に差別はない」「世界のいかなる文明・宗教も等しく尊重する」という基本姿勢が貫かれます。まさに「愛の見本市」です。(和爾)


第四回では、【世界と、つながる】と題し、オーストラリアの売れっ子作家、リアーン・モリアーティをご紹介します。

■翻訳者・和爾桃子さんへの質問を募集中!

作品について、登場人物や背景について、和爾さん自身について、はたまた翻訳者というお仕事について、和爾さんに聞いてみたいことをホンノワ(掲示板)で募集しています!

和爾桃子さんへの質問箱

※いただいた質問は編集部から和爾さんへお渡しし、当日のトークイベントで取り上げていただく予定です

締切は【2/14(水)23:59まで】

ご投稿、お待ちしています!

■和爾桃子さんプロフィール


英米翻訳家。六歳から十八歳まで、青木正児門下の個人教授に和漢古典の手ほどきを受ける。慶応義塾大学文学部中退。

主な訳書:白水Uブックス・サキ全四巻(白水社)、リアーン・モリアーティ『ささやかで大きな嘘』、ジョン・ディクスン・カー「バンコランシリーズ」、キャサリン・アディスン『エルフ皇帝の後継者』(以上、東京創元社)、バリー・ヒューガート「鳥姫伝三部作」、ロバート・ファン・ヒューリック「狄判事シリーズ」、ポール・ドハティ『白薔薇と鎖』『教会の悪魔』、ジェイソン・グッドウィン『イスタンブールの群狼』『イスタンブールの毒蛇』、
ジョー・ウォルトン『ドラゴンがいっぱい!』、ジャクリーン・ケアリー「クシエルシリーズ」、クリスティン・カショア『剣姫』、ピーター・V・ブレット「護られし者三部作」、ローレン・ビュークス『ZOO CITY』(以上、早川書房)アンドレア・ペンローズ『スペシャリテには罠をひとさじ』(ヴィレッジブックス)、共訳『ナツメグの味』(河出書房新社)など。

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藤原編集室

・梅田 蔦屋書店イベントページ「翻訳者と話そう 和爾桃子先生」

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