翻訳者と話そう×本が好き! 翻訳家・和爾桃子の世界

ジョン・ディクスン・カー「バンコランシリーズ」や白水Uブックスのサキ四部作など、翻訳家としてご活躍されている和爾桃子(わに ももこ)さんが、2018年3月3日、梅田蔦屋書店のトークイベント「翻訳者と話そう」に登場されます。

◆トークイベント「翻訳者と話そう 和爾桃子先生」
2018年3月3日(土)19:00〜 (開場18:30)
参加費 1,000円
会場:梅田 蔦屋書店 会議室Shimei(大阪府大阪市北区梅田3−1−3 ルクア イーレ)

ご予約は、梅田蔦屋書店さんのホームページから受付中です。関西方面にお住まいの方、この機会にぜひお運びください!
http://real.tsite.jp/umeda/event/2018/01/post-478.html
mail: umeda_event@ccc.co.jpinfo@sioribi.jp

「翻訳者と話そう」は、翻訳家が自身が訳した本について語るという、なんとも魅力的なトークイベント。今回、本が好き!では、レビュアーのみなさんとこのイベントを楽しんでもらいたいと、あるタイアップ企画を行うことになりました。

■翻訳者・和爾桃子さんへの質問を募集します!

作品について、登場人物や背景について、和爾さん自身について、はたまた翻訳者というお仕事について、和爾さんに聞いてみたいことをホンノワ(掲示板)で募集します!

和爾桃子さんへの質問箱

※いただいた質問は編集部から和爾さんへお渡しし、当日のトークイベントで取り上げていただく予定です

締切は【2/14(水)23:59まで】

ご投稿、お待ちしています!

■訳者のことばで読む

海外翻訳ファンも多い、本が好き!に向けて、和爾さん自身がこれまでに手掛けられた作品について、作品世界の魅力をご紹介いただきました。

第一回は、東洋文化に魅せられた作家、バリー・ヒューガードとロバート・ファン・ヒューリックにみる【おじさまに萌える中華世界】

アメリカ空軍時代、日本や中国などアジア地域に駐在した経験から中国に魅せられたという、バリー・ヒューガード。除隊後に作家活動をはじめた彼の処女作が『鳥姫伝』です。世界幻想文学大賞を受賞し、続く『八妖伝』『霊玉伝』の三部作で完結するファンタジー大作。そんな三部作の読みどころとは?

西洋でも中国史ものは人気ですが、日本人が古典小説などで親しんだ姿とも、本家本元の認識とも若干のズレがあり、むしろ著者の属する文化・民族を色濃く反映しています。かなり意外な本音まで映し出され、まるで中国を鏡がわりにしているみたい。私は「中国ミラー現象」と勝手に名づけています。(和爾)

バリー・ヒューガート「鳥姫伝三部作」

『鳥姫伝』(早川書房)

唐代中国の静かな村庫福で、子どもたちが謎の病に倒れた。純朴な村の少年十牛は、助けを求めて北京へ赴き、老賢者李高と出会う。玉にきずある性格ながら、抜群の頭脳を持つ彼の診断では、治療法はたったひとつ、幻の薬草しかない。大力参と呼ばれるその薬草を捜し、李高と十牛は旅に出る。

『霊玉伝』(早川書房)

老賢者李高に弟子入りした、十牛少年。怪事件解決の依頼をするため、彼らのもとに哀谷にある寺の管長が血相を変えて駆けこんできた。750年前に死んだはずの悪名高き暴君、笑君が復活して仲間の法師をありえない手口で惨殺したと言うのだが!?この怪事件の真相を探るため、笑君の墓へと向かった十牛たちは、そこである不可思議な“玉”の存在にたどりつく―。

『八妖伝』(早川書房)

李高と十牛は道教界最高指導者の依頼を受け、妖怪に大官が殺された事件を追うことになった。死んだ大官の持っていた鳥かごを事件の鍵とにらんだ2人だが、同じ鳥かごを持つ別の大官もまた妖怪に殺されてしまった! この世に8つ存在するという鳥かごと、次々と現われる妖怪たちとの関係は!? シリーズ完結編。

映画脚本家のアメリカ人描く、なんでもありの仮想中国ファンタジー。特に散らかり放題だった前半が終盤にピタピタと収束し、壮大な絵巻物になる一巻は圧巻。力自慢の「永遠の少年」と、頭脳明晰な曲者老師の凸凹コンビは爺萌え必見です。(和爾)

ロバート・ファン・ヒューリック 「狄(ディー)判事シリーズ」

外交官出身、東洋学者としての顔も併せ持つミステリー作家、ロバート・ファン・ヒューリック。「狄判事シリーズ」は研究対象でもあった、中国を舞台にしたミステリーシリーズ。

著者のロバート・ファン・ヒューリックは学者肌の駐日オランダ大使で、江戸川乱歩や松本清張の勧めでミステリを執筆しました。精密な時代考証と、抑制した人情描写が持ち味で、「行政側の実務経験から言わせてもらうと、事件というのは一度にひとつずつ起きたりしない。むしろ複数を同時進行仕立てにしたほうが現実に近い」という持論がありました。(和爾)

『五色の雲』早川書房

渋いおじさまが、渋いおじさま派に捧げるハードボイルド。主人公の狄仁傑は唐代の実在人物です。裏稼業出身の部下たちとともに悪と戦う中国版の鬼平でありながら、実は動物や子どもが大好きで、ちょっぴり恐妻家。決して超人タイプの探偵ではありませんし、身なりも地味。素顔は等身大の気どらないおじさんです。
まずはお試しに、読みやすい短篇集『五色の雲』をお勧めします。中国版クリスマスストーリーも入ったお得な一冊です。

第二回では、ジョン・ディクスン・カーのアンリ・バンコランシリーズを語っていただきます。お楽しみに!

■和爾桃子さんプロフィール


英米翻訳家。六歳から十八歳まで、青木正児門下の個人教授に和漢古典の手ほどきを受ける。慶応義塾大学文学部中退。

主な訳書:白水Uブックス・サキ全四巻(白水社)、リアーン・モリアーティ『ささやかで大きな嘘』、ジョン・ディクスン・カー「バンコランシリーズ」、キャサリン・アディスン『エルフ皇帝の後継者』(以上、東京創元社)、バリー・ヒューガート「鳥姫伝三部作」、ロバート・ファン・ヒューリック「狄判事シリーズ」、ポール・ドハティ『白薔薇と鎖』『教会の悪魔』、ジェイソン・グッドウィン『イスタンブールの群狼』『イスタンブールの毒蛇』、
ジョー・ウォルトン『ドラゴンがいっぱい!』、ジャクリーン・ケアリー「クシエルシリーズ」、クリスティン・カショア『剣姫』、ピーター・V・ブレット「護られし者三部作」、ローレン・ビュークス『ZOO CITY』(以上、早川書房)アンドレア・ペンローズ『スペシャリテには罠をひとさじ』(ヴィレッジブックス)、共訳『ナツメグの味』(河出書房新社)など。
藤原編集室

・梅田 蔦屋書店イベントページ「翻訳者と話そう 和爾桃子先生」

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