本が好き!レビュー大賞 優秀賞作品発表!


もっと読書を身近に感じてもらいたい、書評(レビュー)を通じて本との関わりを深めてもらいたい。
その想いのもと、書評でつながる読書サイト「本が好き!」が開催した「本が好き!レビュー大賞」。

おかげさまで、たくさんの力作をご応募いただきました。
ご応募いただいたみなさま、ありがとうございました!

本が好き!編集部、出版社、北海道新聞社の三社で厳正なる審査を行いました結果、
下記の5作品が各書籍の優秀賞に選出されました。
受賞したレビューとともに発表いたします。

優秀賞発表!

『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』(汐街コナ/あさ出版

優秀賞 太田きなこさん

〔あなたが「前」だと思っていたものの先には何がある?〕…言葉の鈍器で頭をガーンと殴られた。漫画をベースに実体験のストーリーが進む。簡略化された漫画の描写は、脳内でいかようにも自分色に再生され、自分だけに語り掛けて来るような錯覚を覚える。そして途中に差し込まれる精神科医とのQ & Aが、緊張感と危機感を与えてくる。これは単なる体験記ではない。
だからこそタイトルに惑わされず、人生に行き詰まりを感じている人には是非読んで頂きたい。気持ちに寄り添ってくれながらも、やさしく手を取り、進むべき道へと案内してくれる事だろう。私はこの本との出会いがきっかけで、14年勤めたブラック企業を退職した。

【審査員コメント】
「言葉の鈍器で頭をガーンと殴られる」という表現に本書のインパクトが凝縮されている。
自分の言葉で伝えきった潔さが漂っていて好感が持てる。

『美しき鐘の声 平家物語(一)』(木村耕一/1万年堂出版

優秀賞 村山功一さん

長年『平家物語』(以下『平家』と略記)に親しんできたが、こんなにも優しい(“易しい”ではない)『平家』に出合ったのは、初めてである。何よりも文体がいい。“意訳”と銘打っている以上、必ずしも原文に忠実な現代語訳ではない。だが、意訳であるからこそ、そこに著(訳)者の豊かな感性と、温かい眼差しが反映されている。原典を十分に読み込んだ上で、著者が捉えた独自の『平家』観、『平家』世界が描かれており、その新鮮さが読む者を惹きつける。本書は「国民の文学」として永く日本人の心を捉え続けてきた『平家』に、新たな読み方の可能性を示唆してくれる。豊かなイラストも彩を添え、子供から大人まで十分に愉しめる秀作である。

【審査員コメント】
意訳が本書の最大の魅力になっているという点について端的にまとまっている。
安心して本を手に取れる、信頼感あふれる文章。

『原始河川』(二日市壮,藤泰人/国書刊行会

優秀賞 Kさん

写真家の藤さんが撮った神秘的な写真が、この本を読まなければ知 ることがなかったであろう美しく迫力のある大自然の風景を感じさせてくれます。特に印象に残ったのは、釧路川でのカヌーで立ち寄る「鏡の間」です。周りの綺麗な湧き水、透き通った川底に泳ぐ魚を眺めながら休憩所で淹れてもらえる熱いコーヒーを飲むという至 極の時間を過ごしてみたいです。
美幌峠から見た朝景や摩周湖展望台から見る霧の世界は、ラピュタ のような空景色であり、また、神の子池、原始河川はもののけ姫のような太古の森林の風景が広がっており、ジブリのような幻想的な 世界観が広がっているのだと知り、死ぬ前に一度は見たい景色だと 思いました。

【審査員コメント】
道東の自然にジブリの世界観を重ね合わせて紹介することで、秘境としてのイメージが盛り上がる。
若々しい感性が光る文章です。

『稚心を去る』(栗山英樹/JBPress

優秀賞 富子さん
読み終えて、本を閉じる。そのポンという音が自分の再出発の号令みたいに聞こえた。
個を貫くことは、孤を招く。それが稚心。数々の名選手を育て世界に輩出した名将。球団史上最長の八年目。記録にも記憶にも残る名監督。しかし、時にもがき、苦しんでいたと知る。選手の数だけ個性がある。個性の数だけ稚心がある。個性と稚心の狭間で揺れるのは、指導者であれば当たり前かもしれない。名将は稚心を捨てることが、出口の見えないトンネルに唯一の光であると説く。今や栗山流は、人を変え、常識を変え、ひいては世界を変える。実績に裏付けされているからこそ説得力がある。ぜひ多くの指導者に読んでもらいたい。

【審査員コメント】
冒頭の一文が非常に印象的。体言止めが繰り返されることで、力強さのある文章に
なっている。

『カウチポテト・ブリテン』(宗祥子/芙蓉書房出版

優秀賞 いしだようすけさん
テレビ番組やニュースから英国のお国事情を紹介する本書。「日本のテレビ番組はいつからこんなにつまらなくなったのだろう」という挑発的な一文で始まるだけに、さぞかし英国のテレビ番組を礼賛しているのかと思いきや意外と辛辣。たとえば日本でも放送されたドラマ『シャーロック』については、原作であるシャーロック・ホームズファンを喜ばせる点もあるが、理屈が勝ち過ぎてムリを感じたと率直に述べる。タイトルの「カウチポテト」は、ゴロ寝しながらテレビを見る人のことらしいが、英国に住む日本女性の肩肘張らない物言いが心地よい。友情と愛情、死の迎え方、移民問題、LGBTQ‥‥‥日本でも直面する問題のヒントがここにある。

【審査員コメント】
まとめ方が巧い。タイトルの意味や内容がぱっと掴みづらい点を踏まえて、余さず
魅力を伝えている。

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大賞、北海道新聞社賞については、7月中旬に特設ページ内で発表を予定しています。どうぞお楽しみに!

主催:本が好き!レビュー大賞実行委員会
協力:北海道新聞社、各参加出版社

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