【本が好き!ランキング】2018年12月の人気書評1位は、ニュー・アカデミー賞候補となった作家キム・チュイが紡ぐ、ベトナムの光と影『小川』


1位
小川
書籍:小川
(キム・チュイ/彩流社)
レビュアー:かもめ通信さん 得票数:44
書評掲載日:2018-12-02 17:35:52
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/270665/review/217132/

“ベトナムにこんな諺がある。「髪の長い人だけが、恐れを抱く。髪がなければ、髪を引く人はいないから」”

原題の『ru(ル)』は、フランス語では「小川」を、比喩的には「(涙、血、金銭などの)流れ」も意味する言葉だという。
またこの『ru(ル)』は、ベトナム語では「子守歌」「ゆりかご」の意味をもつのだとか。
そしてこの作品、1968年にサイゴンで生まれ、10歳の時に「ボートピープル」となり、マレーシアの難民キャンプを経て、カナダのケベック州に受け入れられたという作者の自伝的小説だというのだが……。……続きを読む

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2位
俺、つしま
書籍:俺、つしま
(おぷうのきょうだい/小学館)
レビュアー:darklyさん 得票数:43
書評掲載日:2018-12-03 19:42:46
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/265207/review/215864/

猫好きというか、猫と人生を共にしてきた人にはとても共感できると思います。

このサイトの書評を見て、なんとなく気になっていたこの本をようやく読みました。私の実家には私が子供の頃から常に猫がいました。そのすべてが飼えなくなった人から譲り受けたものや、野良が居ついてしまったもの、その子供たちです。ちなみに私のプロフィールの画像も現在住んでいる野良二世です。

一般的には子猫の方が可愛いかもしれませんが、私はつしまのような太々しい大人の猫の方が好きです。人間と同じで子供は容赦も情緒もありません。多分この本の作者も同じ好みかもしれません。……続きを読む

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3位
ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」はなぜ傑作か?: 聖書の物語と美術
書籍:ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」はなぜ傑作か?: 聖書の物語と美術
(高階秀爾/小学館)
レビュアー:ことなみさん 得票数:37
書評掲載日:2018-12-21 12:16:10
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/272685/review/218824/

淡路島を通るとき、時々大塚国際美術館に寄ってみます。精巧に作られた陶板画を見ていると、図鑑では得られない力を感じます。いつも最初に行くシスティーナ礼拝堂の迫力と美しさには圧倒されます。

高階先生のこの本は、絵に表わされた物語を読み解く手ほどきをしてくれました。背景の時代的な変化や描法の進化。画家の創意工夫など。天井画の図解付きの解説は、新しい発見でした。創世記からは、ミケランジェロの有名な「アダムの創造」「エヴァの創造」中でも「光と闇の創造」「天と水の創造」は拡大した図解があり、眼からウロコでした。……続きを読む

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3位
ヒトラーのモデルはアメリカだった――法システムによる「純血の追求」
書籍:ヒトラーのモデルはアメリカだった――法システムによる「純血の追求」
(ジェイムズ・Q・ウィットマン/みすず書房)
レビュアー:ぽんきちさん 得票数:37
書評掲載日:2018-12-13 10:04:24
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/272155/review/218408/

ある人種をその人種であることを理由に排除していくということ

少々思い切ったタイトル(原題はHitler’s American Model)である。著者は米国人であり、読者の反発を予想してか、本書中でも慎重な説明がされている。
アメリカはユダヤ人を虐殺してはいないし、ナチズムに加担はしていない。しかし、ナチスが法整備にあたり、アメリカの人種隔離政策を参考にし、それを取り入れたことが史料からは読み取れる、というのが本書の主眼である。……続きを読む

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5位
半分のぼった黄色い太陽
書籍:半分のぼった黄色い太陽
(チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ/河出書房新社)
レビュアー:Kuraraさん 得票数:35
書評掲載日:2018-12-07 00:24:46
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/95211/review/218090/

わずかな人々のはなしにすぎないのに、見えてくる景色は広大であった。

遠い国、ナイジェリア。
行ったこともなければ、地図の位置さえあやふやだ。
職場で2年ほど一緒に過ごしたナイジェリアの紳士がわたしにとって唯一の「ナイジェリア」であった。そして今はアディーチェ の本がナイジェリアとわたしのパイプになってくれているように思える。

アディーチェ の本を開くとアフリカ大地の乾いた空気、人々の熱い鼓動や土の匂いを感じる。

それはあくまでも彼女の文を読んでわたしが作り上げた想像上の風景に過ぎないのだけれども、読んでいるときは確実にその空気を感じている自分がいる。……続きを読む

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5位
熱帯
書籍:熱帯
(森見登美彦/文藝春秋)
レビュアー:茜さん 得票数:35
書評掲載日:2018-12-24 19:47:52
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/271472/review/219034/

汝にかかわりなきことを語るなかれ――。そんな謎めいた警句から始まる一冊の本『熱帯』。

この本に惹かれ、探し求める作家の森見登美彦氏はある日、奇妙な催し「沈黙読書会」でこの本の秘密を知る女性と出会う。そこで彼女が口にしたセリフ「この本を最後まで読んだ人間はいないんです」、この言葉の真意とは?
秘密を解き明かすべく集結した「学団」メンバーに神出鬼没の古本屋台「暴夜書房」、鍵を握る飴色のカードボックスと「部屋の中の部屋」……。
幻の本をめぐる冒険はいつしか妄想の大海原を駆けめぐり、謎の源流へ!

我ながら呆れるような怪作である――森見登美彦(帯文より)

最近は読書スピードが落ちてしまったので、523ページという厚さに怯えながら久しぶりに長編の本を読みました^^;……続きを読む

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7位
境目・広島県の古墳文化
書籍:境目・広島県の古墳文化
(脇坂光彦/溪水社)
レビュアー:休蔵さん 得票数:34
書評掲載日:2018-12-03 07:00:54
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/270152/review/214404/

古墳は畿内だけで築かれたわけではなく、各地方に特有の古墳文化があった。本書はその一例、広島県の古墳文化をまとめた概説書である。

大阪府の百舌鳥・古市古墳群は世界遺産登録を目指しており、2019年の登録に向けて正式な推薦が決定したという。
日本最大の古墳、大仙古墳を含む一大古墳群で、小学校の歴史の教科書にも登場する(ただ、習ったのは仁徳天皇陵だった)。
100基以上の古墳が大阪府堺市・羽曳野市・藤井寺市に分布しており、このインパクトの大きさは古墳と言えば畿内という印象を強くさせた。
貴族の壁画で世間を驚かせた高松塚古墳。
カビが発生して解体まで追い込まれたこの古墳もやはり畿内だ。
しかし、古墳が築かれた時代を古墳時代と呼ぶように、それは畿内だけに限られた存在ではなく、日本の広域で確認されている。
そして、地方にはその場所に特有の古墳文化が展開していたようだ。
本書は広島県の古墳文化を取り上げた概説書である。……続きを読む

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8位

書籍:世にも奇妙な君物語
(朝井リョウ/講談社)
レビュアー:m181さん 得票数:32
書評掲載日:2018-12-13
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/272132/review/218419/

タモさんの「世にも奇妙な物語」に憧れた。朝井リョウの「世にも奇妙な・・・」

作者の朝井さんは、タモリのあの番組のファンでした。

自分で、あの世界を書いてみようとして書き上げたのが、本作「世にも奇妙な君物語」です。
だから、物語は5話構成になっています。
あの作品の特徴は、ホラー的であり、SF的でもあり、理不尽。そして、強烈なオチが最後に用意されています。このラストのオチが楽しみだと言っても過言ではない。
この「世にも奇妙な君物語」にも強烈なオチが用意されていました。……続きを読む

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9位

書籍:みだれ髪
(与謝野晶子/新潮社)
レビュアー:Jun Shinoさん 得票数:31
書評掲載日:2018-12-24
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/91557/review/218985/

与謝野晶子には完敗。シロートながら感嘆した。出版当時と同じ表紙絵も素晴らしい。

輝いている。そしてみずみずしくエキサイティング。与謝野晶子には、完敗だ。

大阪・堺の与謝野晶子文芸館に行きたくて著作ないかなと心に掛けてたら本屋で目に入った。この作品は399首の和歌が掲載されていてうち70首に訳と鑑賞解説がついている。章は「臙脂紫」「蓮の花船」「白百合」「はたち妻」「舞姫」「春思」の6章。

・髪五尺ときなば水にやはらかき
少女(おとめ)心は秘めて放たじ
……続きを読む

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9位

書籍:クリスマス・カロル
(ディケンズ/新潮社)
レビュアー:DBさん 得票数:31
書評掲載日:2018-12-25
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/91824/review/218984/

クリスマスの精神の話

やはり今日はこの本でしょ、と取り出してきました。
二年に一度は再読するディケンズの名作です。

冷酷で人間嫌いの老人スクルージにとって、クリスマスは忌々しい日だった。
子沢山の貧しい書記は休みをとるし、明るい甥っ子は毎年冷たく断られているにもかかわらずクリスマスの食事に誘いに来る。
何よりもキャロルを歌って施しを貰おうとしたり、プレゼントを買ったり、そして慈善に寄付したりすることが何よりも無駄と感じる老人だ。
「人情などはいっさい受けつけず、人を押しのけ、突き飛ばして進んでいく」のがスクルージにとっての正しいことだったのだ。……続きを読む

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