こんにちは。本が好き!編集部東郷です。
「売り場からベストセラーをつくる!」をスローガンに、書店員の投票により選ばれる「本屋大賞」。
2018年から新たにノンフィクション作品を対象にした賞が新設され、話題になっています。
「ほんとうにあったことはおもしろい」
これまでの本屋大賞と違うのは、Yahoo!ニュースが全面的に連携していること。発起人の浜本茂さん(本屋大賞実行委員会理事長、「本の雑誌」発行人)は、こう語ります。
・テーマを発見し、取材し、書き上げる。時間もかかれば、資料集めや交通費もかかる。ノンフィクションって、なかなかコストのかかるジャンルでもあるんですね。それにもかかわらず、いまは出版社が作家さんに取材経費を出せないケースも増えてきていると聞きます。厳しい環境になってきています。
・本屋大賞の小説部門は、小説を読むきっかけのひとつをつくれたと思うんです。今度はノンフィクションでそれができたらいいですね。
同じく発起人の宮坂学さん(ヤフー会長、Zコーポレーション代表取締役社長)も、ノンフィクションへの想いと期待を込めてコメントされています。
・いま、紙の雑誌が減っています。それにともなって、ノンフィクションを発表する場も少なくなってきているかしれない。もったいないことですし、その機会をインターネット企業が補完できるなら、やらなきゃいかんとも思いますね。コンテンツをつくる人を応援したいんです。
・大賞になった作品を読んで欲しいのはもちろんですが、候補作になった他の作品も読んでもらいたいです。ノンフィクションの持っている多様さ、豊かさを体験して欲しい。
出典:発起人が語る
「 #わたしのノンフィクション」に参加しよう
ノンフィクション大賞ならではの「世の中を巻き込む」仕掛けもユニーク。投票は従来どおり書店員のみが参加できますが、誰でも参加可能なハッシュタグキャンペーンが現在進行中。
忘れられない一冊を「#わたしのノンフィクション」をつけてTweetしてみましょう。
公式ページでは、様々な分野で活躍する人の「わたしのノンフィクション」を紹介しています。
一次選考で選ばれたノミネート作品一覧
作品名 | 著者 | 出版社 |
一発屋芸人列伝 | 山田ルイ53世 | 新潮社 |
軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い | 松本創 | 東洋経済新報社 |
極夜行 | 角幡唯介 | 文藝春秋 |
告白 あるPKO隊員の死・23年目の真実 | 旗手啓介 | 講談社 |
日航123便墜落の新事実 目撃証言から真相に迫る | 青山透子 | 河出書房新社 |
ノモレ | 国分拓 | 新潮社 |
Black Box ブラックボックス | 伊藤詩織 | 文藝春秋 |
モンテレッジォ小さな村の旅する本屋の物語 | 内田洋子 | 方丈社 |
43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層 | 石井光太 | 双葉社 |
対象本:2017年7月から今年6月30日までに刊行された和書を対象に、投票で選出。
大賞発表:2018年11月予定
全10作品を本が好き!レビューとともにご紹介
書籍:『一発屋芸人列伝』
(山田ルイ53世/新潮社)
書籍詳細URL:http://www.honzuki.jp/book/265608/
ピックアップ書評(♰sasha♰さん)
安心して下さい、生きてますよ。
テレビへの露出が減ると「消えた」「死んだ」と言われる芸能人たち。
なかでもお笑い芸人たちの露出度の入れ替わりは激しい。芸人さんたちのネタ見せ番組が減ったことも影響しているのだろうと
思うし、こうした番組自体がブームを作り、露出が増えることで視聴者
に飽きられるのも早いのかなと感じる。一発屋。一時のムーブメントを作り、いつの間にかメディアで見掛ける
ことのなくなった芸人は、それこそ掃いて捨てるほどいるのだろう。
そんななかでも、一発屋を自認する芸人9組と著者である山田ルイ53
世の髭男爵を加えた一発屋たちの「ブレイク後」を追ったのが本書。 ……続きを読む
書籍:『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』
(松本創/東洋経済新報社)
書籍詳細URL:http://www.honzuki.jp/book/267116/
ピックアップ書評(臥煙さん)
平成17年に発生したJR西日本の福知山線脱線事故。妻を失った都市計画コンサルタントのJR西日本との闘争の記録。
平成17年4月25日発生したJR西日本の福知山線の脱線事故は死者107名の大惨事。ニュースの都度増えていく死者の数とその後の事故調査で明るみに出たJR西日本の営利追求と安全軽視の体質に驚かされたことが印象に残る。また鉄道事故で死者が100人を越えるのも昭和30年代までで、まさか平成の世に起こるとは思いもよらなかった。……続きを読む
書籍:『極夜行』
(角幡唯介/文藝春秋)
書籍詳細URL:http://www.honzuki.jp/book/266829/
ピックアップ書評(呆け天さん)
4ヶ月間、闇の中を歩きぬき、その果てにみる太陽
この世には「極夜(きょくや)」というものがあり、3~6ヵ月ものあいだ一度も太陽が昇らない漆黒の闇に覆われるのだという。信じられない。
「白夜」という、太陽が沈まない場所・時期があるという話しはむかしから聞いており、なんか、ロマンチックでいいなあくらいに思っていた。
しかし、最長半年ものあいだ、太陽が昇らない、真っ暗闇が続く場所があるというのは、本書で初めて知りました。……続きを読む
書籍:『告白 あるPKO隊員の死・23年目の真実』
(旗手啓介/講談社)
書籍詳細URL:https://www.honzuki.jp/book/269096/
内容紹介
第40回講談社ノンフィクション賞を選考委員の圧倒的な支持により受賞!
「息子がどのような最期を遂げたのか、教えてくれる人はいませんでした」――日本が初めて本格的に参加したPKO(国連平和維持活動)の地・カンボジアで一人の隊員が亡くなった。だが、その死の真相は23年間封印され、遺族にも知らされていなかった。文化庁芸術祭賞優秀賞など数々の賞を受賞したNHKスペシャル待望の書籍化。隊員たちの日記と、50時間ものビデオ映像が明らかにした「国連平和維持活動の真実」。
書籍:『日航123便墜落の新事実 目撃証言から真相に迫る』
(青山透子/河出書房新社)
書籍詳細URL:https://www.honzuki.jp/book/252640/
ピックアップ書評(darklyさん)
この仮説が真実であったとしても今後明らかになることはあり得ないであろう。
日航ジャンボ機墜落事故で思い出すのが山崎豊子「沈まぬ太陽」。私としてはそれほどこの作品は好きではありませんでした。あまりにも一方的に日航という会社自体が悪者になってたので少し違和感を覚えた記憶があります。現実の世の中でそのようなことがあるだろうか、もしかしたら私たちの知らない何らかの複雑な事情があったのではないだろうか、日航という会社自体が概ね半官半民のぬるま湯体質の中で頭から腐っていたとしても、と思ってました。
本書は、小説でもなく、またジャーナリストでもない当時日航のスチューワーデス(当時の呼び名で書きます)であった青山氏が昨日まで一緒にいた先輩や同輩と搭乗客の無念の死を決して風化させてはならないとの思いで書いた渾身のルポです。……続きを読む
書籍:『ノモレ』
(国分拓/新潮社)
書籍詳細URL:https://www.honzuki.jp/book/267048/
ピックアップ書評(呆け天さん)
100年前に別れたノモレ(仲間・友)に会いたい。 アマゾンのイゾラド(未接触先住民)をめぐる、驚異のルポルタージュ。
およそ100年前に、ゴム農園の奴隷にされていた奥アマゾンの先住民たちが、白人農園主を殺害して密林に逃れた。追手に皆殺しにされないために、逃亡した先住民たちは密林のなかで二手に別れた。一つの組は、およそ500キロを踏破して生まれ故郷にたどりつくことができた。しかし、もう一組はいまだに現れない。
故郷にもどることができた者たちは、別れた一組をさがした。アマゾン川奥地の支流をくまなくさがしたがみつからず、ついには、かつて農園主を殺害した地にモンテ・サルバドール(救世主の山)と名づけた新たな村をつくった。新たな村をつくった者たちは、亡くなる時に子孫に「森で別れた仲間(ノモレ)に会いたい。息子たちよ、友(ノモレ)を探してくれ」と言い残す。……続きを読む
書籍:『Black Box ブラックボックス』
(伊藤詩織/文藝春秋)
書籍詳細URL:https://www.honzuki.jp/book/256535/
ピックアップ書評(♰sasha♰さん)
ゴシップ本として読むべからず。
被害者も落ち度があった。性犯罪という恐ろしく辛い体験をした被害者
に対して、容赦なくこんなことを口にする人たちがいる。言っている本
人にそんな意識はないのだろうが、これはセカンド・レイプに他ならない。本書は就職の相談をしていた相手にレイプされながらも、堂々と記者会見
を行った著者による、事件までの経緯とその後、そして性犯罪の被害に
遭遇した人を待ち構える更なる試練、すべて晒した上で性犯罪の被害に
あった人をサポートする体制の必要性を論じている。……続きを読む
書籍:『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』
(内田洋子/方丈社)
書籍詳細URL:https://www.honzuki.jp/book/264055/
ピックアップ書評(ぱせりさん)
モンテレッジォ村の碑文にはこのように刻まれているそうです。「山に生まれ育ち、その意気を運び伝えた、倹しくも雄々しかった本の行商人たちに捧ぐ」
「何世紀にも亘り、その村は本の行商で生計を立ててきたのです。今でも毎夏、村では本祭りが開かれていますよ」
というその村は、イタリア北部の山岳地帯にある過疎の村なのだ。
モンテレッジォ村。
本の行商人たちは、この村から、籠いっぱいの本を担いでイタリアじゅうを旅した。そのおかげで各地に書店が生まれ、〈読むということ〉が広まったのだという。
この話を著者内田洋子さんにしてくれたのは、ヴェネツィアの古書店の主人であり、彼もまた本の行商人の末裔だった。……続きを読む
書籍:『ユニクロ潜入一年』
(横田増生/文藝春秋)
書籍詳細URL:https://www.honzuki.jp/book/262902/
ピックアップ書評(pitopitoさん)
2018/3/25読了。ユニクロの三店舗に潜入し労働実態を記載。柳井さんが絶対であることと、現場の疲弊が良くわかった。提言にあるボス潜入は面白いかも。結果、今の価格を維持できなくなるかもしれないけど。
書籍:『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』
(石井光太/双葉社)
書籍詳細URL:https://www.honzuki.jp/book/262436/
ピックアップ書評(臥煙さん)
2015年に川崎で発生した13歳の少年の殺害事件。被害者、加害者家族を追った、現在の司法制度に疑問を投げ掛ける渾身のルポ。
2015年2月15日、中1、13歳の少年が川崎市の多摩川河川敷で死体となって発見される。全身43箇所をカッターで切られ、血だらけになって23.5m這い、息耐えた状態。
世間を騒がせた殺人事件。結局逮捕されたのは3人の少年。それぞれ家庭に問題を抱えてはいるもの、なぜ殺人にまでエスカレートしていまったのか。事件の背景を追った1冊。
筆者は1977年生まれ、ノンフィクションで多くの著作がある。自分は『浮浪児1945ー』だけ読んだことがあった。アラフォーからアラフィフの自分より下の代がこれだけの作品を産み出すことに大きな感慨。……続きを読む
時間を経ても風化させてはならないもの、語り継いでいくべきもの。ノンフィクション作品には、著者の「これを伝えなければならない」という強い使命感を感じます。
生き方に影響を及ぼすような、世の中の見方を変えるような出会いを、本を通して体験できるノンフィクションの世界。
ぜひ手に取ってみてください。
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