本が好き!のサービスである「本が好き!らぼ 近刊情報サーチ」の中から、本が好き!編集部のメンバーが、独断と偏見とその時の気分で選んだ近刊情報をお届けする「今週の気になる近刊」。
第10弾は、集英社より6/21に発売になる、三宮麻由子(さんのみや まゆこ)さんの読書エッセイ、『世界でただ一つの読書』。4歳で病気のために視力を失った三宮さん。目に見える景色を失った三宮さんは、スズメの鳴き声を聞いて、闇しかないと思っていた自分の世界に以前と同じように朝が来たことを知り、感動されたそうです。多数の鳥の鳴き声を覚え、自然の音を聴き、視覚以外の感覚から得られる情報で自分なりの景色を形作っていったといいます。
そんな三宮さんの活動は多彩です。報道翻訳の仕事をしながら、豊かな語彙とみずみずしい感性でつづられたエッセイを出版、ラジオや講演をこなし、絵本も手掛けられています。
そんな三宮さんの新刊が『世界でただ一つの読書』。点字で古今東西の名作を読んだ読書エッセイ。
研ぎ澄まされた感覚をもつ、三宮さんが名作と呼ばれる文学作品を読んでどんな景色を描いたのか?
気になる一冊です。
三宮真由子さんプロフィール
エッセイスト。東京生まれ。上智大学文学部フランス文学科卒業、同大学院博士前期課程修了。外資系通信社に勤務。2001年にエッセイ『そっと耳を澄ませば』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。著書に『人生を幸福で満たす20の方法』『鳥が教えてくれた空』、『おいしいおと』『でんしゃはうたう』などがある。
・オフィシャルホームページ「三宮真由子の箸休め」
『世界でただ一つの読書』
書籍:『世界でただ一つの読書』
(三宮麻由子/集英社)
書籍詳細URL:http://www.honzuki.jp/book/265958
内容紹介
『坊ちゃん』、『アラビアンナイト』、『海の上のピアニスト』、『博士の愛した数式』など、古今東西の名作を点字で読み、心に感じた世界を描く。唯一無二の瑞々しい読書エッセイ。全17編。(解説/桂 文珍)
聴覚の世界から語りかける、三宮麻由子さんの著作
書籍:『鳥が教えてくれた空』
(三宮麻由子/集英社)
書籍詳細URL:http://www.honzuki.jp/book/87799/
ピックアップ書評(素通堂さん)
たとえ目が見えなくても、空を感じることができる。
著者は4歳の時、病気のため一日にして失明しました。
失明するということがどういうことか、正直なところ僕自身よく分かりません。ただ、本書を読んで知ったこと、それは、失明するということは「空を失う」ことなのだ、ということです。……続きを読む
書籍:『福耳落語』
(三宮麻由子/日本放送出版協会)
書籍詳細URL:http://www.honzuki.jp/book/39155/
ピックアップ書評(keibi402さん)
柳家さん喬師の落語CDのジャケットに「さん喬の落語に登場する女性にはリアリティがある」との一言をみつけた。 面白いことをコメントするなとおもい、著者略歴を読むとこの本が紹介されていたので、早速よむ破目に・・・
本の面白さと同時に、「小言念仏」に登場するどじょうに興味をもち、浅草「駒形どぜう」で、壮絶などじょうの成仏を描いてみせる著者の感性に感心する。
丸のどじょうが苦手な私だが、「これからの季節、柳川鍋も良いな」などと反応してしまうのが情けない。……続きを読む
音が楽しい!オノマトペ絵本
書籍:『でんしゃはうたう』
(三宮麻由子/福音館書店 )
書籍詳細URL:http://www.honzuki.jp/book/131746
ピックアップ書評(rachelさん)
正直、読み聞かせには技量がいる一冊ですが、オノマトペが楽しいです。3歳児のために母が図書館で借りてきた一冊。福音館のふしぎなたねシリーズです。電車のオノマトペがすごい。正直、読み聞かせには技量がいります。鉄分の濃いお父さんに練習してもらって、お話し会などで読み聞かせして欲しいわー。
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見えない世界で闘う、ブラインドスポーツ小説
書籍:『伴走者』
(浅生鴨/講談社)
書籍詳細URL:http://www.honzuki.jp/book/261458/
ピックアップ書評(柊木かなめさん)
パラスポーツを描いた異色の作品。こんなに熱いものだと思わなかった!
タイトルでもある伴走者とはなんでしょうか。
読んで字のごとくではあるのですが、帯にはこう書かれています。ばんそうしゃ[伴走者]
視覚障害のある選手が安心して全力を出せるように、選手の目の代わりとなって周囲の状況や方向を伝えたり、ペース配分やタイム管理をしたりする存在。つまりは、視覚障害者の目となりサポートする存在ですね。
そんなアスリートと伴走者の物語が『夏・マラソン編』と『冬・スキー編』として2つ収録されています。2編の間につながりはないので、どちらか片方だけでもどちらから読んでも大丈夫かと思います。
どちらのお話も2020年――東京オリンピック・パラリンピックから数年後の近未来の出来事です。
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目に見える景色がない世界を、三宮さんは「シーンレス」という和製英語で呼びます。見えないことはハンディキャップではなく、鳥の声や風の音など、自然の音は多くのことを教えてくれる。自然の音を風景として聞いて、自分なりの景色を描くことで世界を広げてきたのだそうです。
浅生鴨さんの著作も、ブラインドランナーと共に走り、コース面の凹凸やカーブ、レース状況を伝え、ゴールに導く伴走者の関係が描かれますが、見えないことが特別なことではないという感覚や、恐怖心を押さえ、伴走者を信じることで全力を尽くす姿に、ハッと気づかされることの多い作品です。
あたりまえの日常が、決してあたりまえなものではないことを教えてくれます。
(東郷)
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