こんにちは! 本が好き!編集部の和氣です。
レビュアーの皆さんが書評を書く際に役立ちそうな情報を掲載していくために、密かに始めております「書評研究会」。
今回は『バカヤンキーでも死ぬ気でやれば世界の名門大学で戦える。』をご献本いただいたポプラ社の電子書籍企画室室長であり、編集者でもある大久保さんにお話を伺いました。
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大久保さんご自身が読んで楽しい、ためになる書評はどのようなものでしょうか?
長さが気になります。
数百ページの本を読んで色んな思いが沸いてくるとよほどの文章の手練れでない限り、その本の魅力を2~3行、百文字以下で伝えられるとは思えません。感動したら中の文章の引用をしてでも何とか多くの人に伝えようと必死になり、ある程度のボリュームを「ダーッ!」と書いてしまうものです。
それを推敲して短くするかどうかは人それぞれですが、後から後から言葉が否応なく出てきて止まらないのが良い作品を読んだときのリアルな反応じゃないでしょうか? 単純に多くの言葉を費やして人にアピールしますよね。(みなさんの「そうそう!」って声が聞こえます)
熱い思いを何とかつたない文章でも人に伝えようとする、その人なりの過剰な努力が伝わる書評が最高です!
編集者としてされて嬉しい書評はどんなものでしょうか?
本(書籍)というのは日本で1日200冊も出ていて、そのほとんどは編集者になんの反応もなく、誰が買っているのかもわからず消えていきます(切って燃やすか、溶かして再生紙になります)。これはグーテンベルクが初めて聖書を刷った1400年半ばから今まで500年間の出版の歴史です。
ですが、ネットでのレビューやfacebookなどのSNSで「編集者バカヤロ! コノヤロ!」とか「この作品スゲーイイ!」とかいわれるのは最高ですね。反応がないのが最悪で、それだとこの世に存在しないも同じですから。
「あーそういう見方もあるのか…」とか「やっぱりそうとらえてきましたか!」じゃあスウェイバックしてこう返そう、みたいな双方向の意思のピンポン、やり取りが実際ではなくても頭のなかだけでも発生するのが嬉しい書評ですね。
編集者としてされて嫌な書評はどんなものでしょうか?
これまた2.でもうしあげましたが、書評は善悪、硬軟織り交ぜてすべてウェルカムで、無反応、完無視されると田舎に帰りたくなります。
あっ、もう帰るべき田舎が地方の均一化、効率化で失われてしまったことを2016年のお正月に帰省して身にしみました。逃げ込むところはもはやこの地上にないんです。
私の居場所を作り続けていただくためにもみなさま多くの、檄ある書評をお願いいたします。巨大なショッピングセンターをうろつきまわるリビングデッドにはなりたくないんです!
今後の本が好き!に期待することはなんでしょうか?
期待すること…… 「ドランク読書会」ですね。ドリンクじゃないですよ。ヘベレケになるやつです。リアルで顔を合わせる場が多ければ多いほどいいのかな、と。
あっ、そうそう、うちで『あん』という小説を出版させていただいているドリアン助川さんの朗読、歌唱イベントが2月1日にあってすごいな~って感動したんです。
その様子をうちの社員に伝えた文章(書評じゃなくてイベント評ですね)がこちらで、ここに「本が好き!」に今後期待することのヒントがあるかもしれません。※ 『あん』は2015年に映画化もされた小説。どら焼き店の求人をみてやってきた徳江という高齢の女性。彼女が「あん」づくりに託した人生とは? 深い余韻が残る現代の名作。
【ドリアン助川さん新刊『あなたという国』(新潮社)発売記念イベント:「詩と愛とニューヨーク」】
行ってみると50人以上の大入り、40代以上の女性がメインでしたが、知的で温かな方ばかりの印象で『あん』からの流れでとても人気が出ているなと感じました。
実際『あん』を書評やfacebookで拡め続けている方が数人いてfacebook友達の私を見つけて話しかけられました。
ドリアンさんはホイットマンの詩の朗読やアメイジンググレースなどの歌を次々と披露。しかも、作品中の”Love Song”という歌を歌いだした時は思わず「えっ!」といっちゃいました。
本には歌の題名だけで、歌詞が書かれておらず、作品の重要なキーとなる曲なので、読んだ人は「聴きたい」と自然と求めてしまうように文中で構成されていますが、「ここでたった50人のために!」と。
その内容と本の内容がリンクしていて物語と現実の境界がなくなり鳥肌がたちました。「空想と現実を立体的に混ぜ合わせて感動を極地的に起こす」ということを
おそらくドリアンさんは書かれているときから意図されていたと思います。2001年の9.11に見舞われたニューヨークを舞台にしたこの本の中で恋人の韓国人の女性が「これからインターネットがあたりまえのものになり歌手と作家が成り立たなくなる」というくだりがあるのですが、そうならないためにはどうすればいいかというドリアンさんの答えなのだと思います。
もちろんその場で「作家が成り立たなくなる」はずのスマホで参加者のみなさん、多くの知り合いに今日ここで起こった一期一会の感動を、即!伝えてました 笑。
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いかがでしょうか?
やはり、立場が違えば意見も違いますね。
それにしても、リアルなイベント、というのはやれたらおもしろそうですね。
本が好き!としては、このように今後もレビュアーの皆さんの参考になるような書評に関する情報をどんどん掲載していきますので、お役に立てれば幸いです。
ではまた~