こんにちは。本が好き!編集部の東郷です。
2018年8月6日~2018年8月12日の人気書評ランキングを発表します。
1位
書籍:『クリック?クラック!』
(エドウィージダンティカ/五月書房)
レビュアー:かもめ通信さん 得票数:42
書評掲載日:2018-08-06 05:33:06
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/267436/review/209490/
彼女が「クリック?」と聞いたらすぐに「クラック!」と応えよう。なぜって何千という女たちの声が、彼女のすり減った鉛筆の先から文字となって溢れ出すことを待ち望んでいるのだから。今も、これからも。
エドウィージ・ダンティカは1969年、ハイチに生まれた。
12歳の時、先に渡米していた両親の後を追ってアメリカに渡り、ブルックリンのハイチ系アメリカ人コミュニティで暮らすようになったのだという。
本書に収録されている物語たちは、そうした彼女自身の幼い日の記憶とともに、彼女の家族や身近な人々の記憶をたどりながら紡がれたものなのだろう。
苛酷な状況下でのハイチの人びとの、故郷の記憶を胸にアメリカで暮らす人々の、さらにはアメリカ生まれ育ったハイチ系アメリカ人の想いやその暮らしぶりなどが、詩的なほど繊細なタッチで描き出されている。……続きを読む
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2位
書籍:『ゲッベルスと私──ナチ宣伝相秘書の独白』
(ブルンヒルデ・ポムゼル、トーレ・D.ハンゼン/紀伊國屋書店)
レビュアー:かもめ通信さん 得票数:37
書評掲載日:2018-08-08 05:43:05
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/265741/review/209518/
「なにも知らなかった私には罪はない」と彼女は言う。もしそれが事実だとしても「見ようとしなかったこと」に罪はないのだろうか。その問いは私自身に跳ね返る。
彼女は、1911年、ベルリンで5人きょうだいの長子として生まれた。
父親は内装業を営んでいて、実家はとりたてて裕福というわけではなかったが、第一次世界大戦後、物資不足と貧困にあえいだドイツ国内にあって、幼年期から食べ物に窮したことがなかったというのだからかなり恵まれていたはずだ。
ベルリンの中でも裕福な地区で生まれ育ったが故に、周囲と自分を比べる機会も多かったのだろう、上昇志向が高く、きれいに装ってオフィスで働くことに憧れる娘に成長した。……続きを読む
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3位
書籍:『蛍川』
(宮本輝/角川書店)
レビュアー:ことなみさん 得票数:35
書評掲載日:2018-08-08 22:58:53
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/96060/review/209901/
「蛍川」と「泥の河」が収められている。
「泥の河」で1977年(昭和52年)に太宰治賞。「蛍川」で1978年(昭和53年)に芥川賞を受賞した。宮本輝さん30歳でここが作家としての出発点だった。
角川文庫版を読んだが奥付を見ると昭和55年初版、手持ちの物は平成20年、77版になっている。映画では「優駿」も素晴らしかったが、「泥の河」は重い気分をあと後まで引きずるような秀作だった。……続きを読む
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4位
書籍:『世界を変えた50人の女性科学者たち』
(レイチェル・イグノトフスキー/創元社)
レビュアー:ぽんきちさん 得票数:34
書評掲載日:2018-08-07 11:52:16
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/264270/review/209447/
「私は『知ること』を諦めない」。差別や困難に立ち向かった50人の物語。あなたの心に響くメッセージがきっと見つかる・・・!
歴史の陰に科学あり。その科学の陰に女性科学者あり。
本書は偉大な功績を残しつつ、あまり注目を浴びてこなかった50人の女性科学者にスポットライトを当てる。著者のレイチェル・イグノトフスキーはイラストレーター。教育や科学リテラシーに深い関心を持ち、わかりやすいイラストで情報を伝えようと試みている。本書は、米国でビジュアルブックとして出版されて20万部を突破、世界19カ国で翻訳されたという注目の1冊である。……続きを読む
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5位
書籍:『ダーウィンと出会った夏』
(ジャクリーンケリー/ほるぷ出版)
レビュアー:Wings to flyさん 得票数:33
書評掲載日:2018-08-08 17:28:29
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/187605/review/209867/
1899年の夏、少女は科学者になりたいと強く願っている自分を発見した。
この夏のテキサスは、ものすごい暑さだ。みんなが日の当たるところに出るのは、すばやく次の日陰に移動する時だけ。なんで新聞社は日陰の気温を報じないのかしら?通りの真ん中で測定した気温より、よっぽど役に立つと思う。苦労して書いた手紙を<投書欄>に送ったら、日陰の温度も載るようになった。家族は私よりもっと驚いた。キャルパーニア・ヴァージニア・テイトはもうすぐ12歳、彼女はその夏に「共同研究者」として、とある発見に貢献する。……続きを読む
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6位
書籍:『おらおらでひとりいぐも 第158回芥川賞受賞』
(若竹千佐子/河出書房新社)
レビュアー:ぽんきちさん 得票数:32
書評掲載日:2018-08-09 13:58:07
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/259472/review/209925/
人生はいつだって未整理で、人はいつだって物語の途上なのかもしれない、が。
第158回芥川賞受賞作。
桃子さんは老女である。
夫には先立たれ、16年をともにした老犬も世を去った。
息子とも娘とも疎遠である。
ひとりぼっちで生きている桃子さんだが、その日常は存外にぎやかだ。……続きを読む
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7位
書籍:『フリント船長がまだいい人だったころ』
(ニックダイベック/)
レビュアー:星落秋風五丈原さん 得票数:31
書評掲載日:2018-08-09 00:19:16
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/197703/review/208154/
ものの善し悪しは考え方ひとつで決まる(there is nothing either good or bad but thinking makes it so)『ハムレット』より
ロバート・ルイス・スティーヴンソンの『宝島』で語られるフリント船長は、悪名高い海賊団を率いている悪人である。では、なぜ彼が海賊を率いるようになったのか。貧しくて海賊しか生活の術はない。罪を被せられて悪の道に走った、等々…オトナの小説ならばいろいろと理由は考えられるが、子供に語り聞かせる物語ならば「なぜ」は要らない。悪人としての記号の役割を果たすだけで良かったからだ。……続きを読む
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8位
書籍:『むすびつき しゃばけシリーズ17』
(畠中恵/新潮社)
レビュアー:かもめ通信さん 得票数:30
書評掲載日:2018-08-10 05:49:12
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/267683/review/209593/
「むすびつき」と聞けば、てっきりこの世の「縁」のことだと思いきや……。
江戸は通町にある廻船問屋兼薬種問屋の長崎屋の若だんなは、たいそう病弱なことで有名なのだが、人にはなかなか打ち明けられられない秘密を抱えている。
なにしろこの若だんな、齢三千年という大妖を祖母に持つ故、巷の人には見えない妖もしっかり見えるし、何をさしおいても「若だんな第一」という二人の兄やは、人の姿はしているものの、それぞれ名だたる妖なのだ。……続きを読む
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8位
書籍:『指輪物語 (3)』
(J.R.R.トールキン/評論社)
レビュアー:ゆうちゃんさん 得票数:30
書評掲載日:2018-08-07 20:47:59
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/192867/review/209019/
二つの塔の上巻は、アンデュインの大河の西側の動向。モレアの坑道から奇跡の生還を遂げたガンダルフが、ローハン王国と木の牧人エント族の力を借りて、サウロン方に与したイセンガルドのサルーマンを退治する。
イセンガルト(映画ではアイゼンガルト)は、ゴンドール王国最繁期に建てられた西の守りの要塞。オルサンクと呼ばれる塔が建っており、今は白の賢者サルーマンの拠点となっている。ローハンは、ゴンドール王国が南方の野蛮人と行った戦争に加勢してくれた北方人の青年セオルに割譲した歴史ある辺境国。騎馬国とされる……続きを読む
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10位
書籍:『少年が来る (新しい韓国の文学)』
(ハンガン/クオン)
レビュアー:ぱせりさん 得票数:29
書評掲載日:2018-08-07 08:37:01
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/244982/review/208473/
「おい、戻っておいでよ。 おーい、私が名前を呼ぶから今すぐ戻っておいでよ」 「なんで暗いとこに行くの、あっちに行こうよ、お花が咲いてる方に」 そして、少年はくる。
「カンボジアでは二百万人以上も殺しました。我々にそれができない理由がありません」という言葉が、軍事政権に抗議して拡大していくデモに対峙する政権側の考えだった。
非武装の市民に向かって放たれた火炎放射器。病院がまるごと焼かれた。人道的理由から国際法上禁止されていた鉛弾が兵士たちに支給される。四十万人の非武装市民に向けての八十万発。手を挙げて投降してきた少年たちは、一列に並んだまま、容赦なく銃弾を撃ち込まれた。……続きを読む
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10位
書籍:『ガラスの街』
(ポールオースター/新潮社)
レビュアー:DBさん 得票数:29
書評掲載日:2018-08-09 00:29:15
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/212433/review/209903/
街の灯と虚無感に浸る話
ポール・オースターの作品を読むのは初めてだった。
ニューヨークを舞台にしたポストモダンな作風の作家だというくらいしか知らなかったので、新鮮な気持ちでページをめくっていく。
主人公はミステリー作家のクイン、妻子を失くして一人で暮らしている35歳の男だ。
ニューヨークの小さなアパートメントに住んで、野球を見たり美術館を巡ったり、そして長い散歩をする孤独な男。……続きを読む
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10位
書籍:『人魚ノ肉』
(木下昌輝/文藝春秋)
レビュアー:はるほんさん 得票数:29
書評掲載日:2018-08-08 09:22:37
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/266218/review/209833/
京と私の黒歴史(笑)
書評を始める前に、昔語をしよう。
もうずいぶん前になるが、新選組にハマったときに人様に借りて新選組乙女ゲーに人生初挑戦した。捏造されたイケメンと恋愛シチュに、なんかもう酷い脇汗が出た。割と歴史に忠実に作られており、面白い設定がはめ込まれていたのだがそのまま誰にも語ることもできぬ黒歴史となっていた。
実は「その面白さ」が、本書の設定に通じていたのである。……続きを読む
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13位
書籍:『羽衣 (対訳でたのしむ)』
(三宅晶子/檜書店)
レビュアー:ぽんきちさん 得票数:28
書評掲載日:2018-08-08 22:43:22
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/267870/review/209900/
「いや疑ひは人間にあり。天に偽りなきものを」---「祝言性」とは何だろうか。
素人が学ぶ能シリーズ。今回は「羽衣」を読んでみます。
大変人気の演目で、現在でも繰り返し上演されているそうです。
内容はといえば、いわゆる羽衣伝説です。天から清らかなものがやってきて去っていく類話は古来数多くあるようで、環太平洋には「白鳥処女伝説」と総括できるものがあちこちに残っているとのこと。これもそんなお話の1つと言えましょう。……続きを読む
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13位
書籍:『テンプル騎士団』
(佐藤賢一/集英社)
レビュアー:星落秋風五丈原さん 得票数:28
書評掲載日:2018-08-11 00:55:21
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/267874/review/209906/
軍事 政治 経済を握ったオールマイティ集団は なぜ滅びたのか
映画『ダ・ヴィンチ・コード』で一躍名が知られたテンプル騎士団。本書は彼等が一斉に逮捕される場面から始まる。聖地エルサレムへの巡礼者護衛の目的で自然発生的に結成されたテンプル騎士団が、なぜ時の権力者から敵視される存在になったのか。……続きを読む
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15位
書籍:『サー・エドワード・バーン=ジョーンズ』
(エドワードバーン・ジョーンズ/トレヴィル)
レビュアー:efさん 得票数:27
書評掲載日:2018-08-09 05:04:59
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/267875/review/209907/
ここで問題です。この絵は水彩でしょうか?油彩でしょうか?/大変美麗でロマンティックなバーン=ジョーンズの画集
バーン=ジョーンズのことは以前から知っていましたが、過日、『ラファエル前派』 を読んで火がついてしまい、そのレビューの際にも書いたとおり、バーン=ジョーンズの画集が欲しくなり、やっぱり本書を買ってしまいました(あ゛~、「ぽちっとな」してしまった)。……続きを読む
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