あの人を偲ぶ:不朽のファンタジー小説「ゲド戦記」作家、アーシュラ・K・ル=グウィン

スタジオジブリが2006年に制作したアニメーション映画『ゲド戦記』。その原作者であるアメリカ人作家、アーシュラ・K・ル=グウィンさんが2018年1月22日にご自宅にてご逝去されました。

「ゲド戦記」だけでなく、『ロード・オブ・ザ・リング』と「指輪物語」、『ネバーエンディング・ストーリー』と「はてしない物語」など、ファンタジー小説の映像化を試みた例は過去にいくつもありますが、その敷居の高さから、批評と常に隣り合わせな存在です。というのも、原作に描かれる世界は、私たちが見たこともない未知の世界なのですから。

わたしにとって大切なのは、何か具体的な改善策を提供することではなく、想像上のものではあっても十分説得力のある、もう一つの可能な現実を提供することによって、わたしの心を、ひいては読者の心を、怠惰で小心な思考回路から解き放ち、わたしたちの今の生き方が唯一可能な生き方だと考えるのをやめさせることなのである。 エッセイ「ファンタジーと言葉」より

とル=グウィン自身が著書で語っています。

ファンタジー小説を読む醍醐味は、小説にちりばめられた無数のピースをつなぎ合わせ、壮大なジクソーパズルを完成させる過程こそが重要であり、すべてのピースがあるべき場所に収まったとき、読み手自身の生き方への問いかけが得られるということかもしれません。映像化作品だけをみて、「あのキャラクターはイメージと違う!」「本質を突いてない」などコメントしてしまいがちですが、なんとも壮大な作家の視点に驚きます。

みんなでつくる読書ガイド「本が好き!」ではル=グウィンさんのご冥福をお祈りするとともに、世界中のファンを魅了する、不朽のファンタジーに触れ、その深遠さと読書のわくわく感を感じていただくべく、代表作品を「本が好き!」に寄れられたレビューとともにご紹介します!

不朽のファンタジー小説「ゲド戦記シリーズ」


書籍:ゲド戦記 1 影との戦い (ソフトカバー版)
(岩波書店)
書籍詳細URL:http://www.honzuki.jp/book/34710/

ピックアップ書評(かもめ通信さん)

「君の名は?」……本当の敵は誰なのか?!……『ゲド戦記』は“影との戦い”をなくして語れないと思わない?!……続きを読む

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書籍:ゲド戦記 2 こわれた腕環 (ソフトカバー版)
(岩波書店)
書籍詳細URL:http://www.honzuki.jp/book/25647/

ピックアップ書評(KiKi(Brunnhilde)さん)

第1作目は広い世界を転々と旅するゲドの姿を描く中で、彼が己と向き合う話で、この第2作目は閉鎖的な世界で、己を失わざるをえなかったテナーという少女がゲドとの出会いにより己を取り戻す話だと思います。……続きを読む

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書籍:ゲド戦記 3 さいはての島へ (ソフトカバー版)
(岩波書店)
書籍詳細URL:http://www.honzuki.jp/book/34711/

ピックアップ書評(クロノカフカさん)

面白い。1、2も面白いですが3巻も面白い。こんなこと今言うのはおかしいですが、個人的には2が一番好きです。ただ!テーマに関して言うなら3は逸品だと思います。……続きを読む

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書籍:ゲド戦記 4 帰還 (ソフトカバー版)
(岩波書店)
書籍詳細URL:http://www.honzuki.jp/book/34712/

ピックアップ書評(KiKi(Brunnhilde)さん)

社会の中でそれなりの「力」を持ち、それなりの「仕事」を成し遂げた人間は、それができていた世界から足を洗った瞬間に、まるで子供のように、どっちへ向かえばいいのか……続きを読む

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書籍:ゲド戦記 5 アースシーの風
(岩波書店)
書籍詳細URL:http://www.honzuki.jp/book/82432/

ピックアップ書評(KiKi(Brunnhilde)さん)

この作品から KiKi が読み取った一番大きなメッセージと思えるものは、「人間がこの世界をあたかも自分たちのために作りかえてきたかのように傲慢に振る舞っていることに対するある種の警鐘」……続きを読む

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「ゲド戦記」だけじゃない!ル=グウィンの物語世界


書籍:ラウィーニア
(河出書房新社)
書籍詳細URL:http://www.honzuki.jp/book/7899/

ピックアップ書評(ぴょんはまさん)
「ゲド戦記」のアーシュラ・K・ル=グウィンによる、女性視点の「アエネーイス」。 「行け」という声が聞こえるか。……続きを読む

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書籍:闇の左手
(河出書房新社)
書籍詳細URL:http://www.honzuki.jp/book/24034/

ピックアップ書評(efさん)

1970年のヒューゴ賞、ネビュラ賞独占受賞作です。物語の舞台となるのは<冬>とも呼ばれている惑星ゲセン。この星はその俗称からも分かるとおり、極寒の世界であり、そこに住む「人類」は何と、両性具有だったのです。……続きを読む

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併せて読みたい、ファンタジー作家が綴る貴重なエッセイ集


書籍:ファンタジーと言葉
(岩波書店)
書籍詳細URL:http://www.honzuki.jp/book/226652/

ピックアップ書評(SETさん)

『ゲド戦記』の著者によるエッセイ集。ファンタジー小説は子供が読むもの、そんな偏見をときほぐす。……続きを読む

いかがだったでしょうか。この機会にル・グウィンワールドにぜひ触れてみてください!子どものころに読んだという人も、大人になってから再読するときっとまた違ったメッセージを受け取ることができそうです。
本の感想は、本が好き!へ投稿してみてくださいね。

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