【本が好き!ランキング】今週の1位は経済危機下のキューバを舞台に繰り広げられる、幻の文書を巡る群像ミステリー『ハバナ零年』(共和国)!


こんにちは。本が好き!編集部の東郷です。

2019年5月6日~2019年5月12日の人気書評ランキングを発表します。

1位
ハバナ零年
書籍:ハバナ零年
(カルラスアレス/共和国)
レビュアー:かもめ通信さん 得票数:29
書評掲載日:2019-05-06 14:10:19
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/275977/review/226517/

停電ばかりでろくに電話も通じない経済危機に陥ったキューバで、数人の男女が互いに駆け引きをしながら必死に探し求めるのは、電話がキューバで発明されたことを証明する貴重な文書だった!?

80を過ぎた実家の父は旅行が趣味で
退職してからというもの、夫婦であちこち出かけてきた。
そんな父が、前々から一度は行きたいと言い続けながら、
行けずにいたのがキューバだ。

近年すっかり観光地化されて
旅行もしやすくなってきたと聞きはするが、
いかんせんキューバは遠い。
高齢者夫婦二人で温泉旅行に行くのとはわけがちがうし、
荷物持ちをかねたお伴として、
父の血を受け継いだのかこれまた行きたがりやの娘がついていったとしても、
ゆったりと旅をするには時間もお金もかかりすぎ、
かなりの体力も必要だから、実現はまず無理だろう。

でも待って!
実際に行くのは無理でも本の中なら旅はできる!
そんなことを考えていた矢先に目にしたのがこのタイトル。……続きを読む

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2位
トリック
書籍:トリック
(エマヌエルベルクマン/新潮社)
レビュアー:星落秋風五丈原さん 得票数:27
書評掲載日:2019-05-09 06:37:42
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/276862/review/225970/

何度も出版社に突き返されたルーシー・モード・モンゴメリの『赤毛のアン』みたいな経緯を辿り 世に出た著作 これもまた一つの奇跡

不朽の名作『赤毛のアン』を最初にモンゴメリーが複数の出版社に原稿を持ち込んだときは、すべての出版社で出版を断られた。自宅の屋根裏部屋に“お蔵入り”していた時期を経て、モンゴメリーが本作を読み返し、面白いのでやはり出版すべきであると思い直し、出版社に再度交渉すると、今度はトントン拍子に進展した。名作にはそれくらいの逸話があってしかるべきなのかもしれない。ならば持ち込み原稿を断わられ続けること10年、スイスの名門ディオゲネス社から刊行されるや、たちまちベストセラーとなり、17ヵ国語に翻訳された本作も名作か。
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3位
丸谷才一の日本語相談
書籍:丸谷才一の日本語相談
(丸谷才一/朝日新聞社)
レビュアー:はなとゆめ+猫の本棚さん 得票数:26
書評掲載日:2019-05-06 05:52:43
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/277189/review/226550/

船名によくある「~丸」。昔の男の子の幼名牛若丸、日吉丸の「丸」の語源に驚く

「週刊朝日」に寄せられた日本語の語源や表現の疑問に対して作家丸谷才一の回答を収録した作品。

最近は小説でも、翻訳本でも、動植物をカタカナで表記する場合が、多い。猫をネコとか犬をイヌ、猪をイノシシ、動物もカタカナ表記はどうかなとは思うが、文学作品で植物をカタカナで表記するのは嘆かわしいと、質問者と一緒に丸谷も批判する。私たちは昔から、複雑な態度で植物と付き合ってきたし、そういういろんな関係の累積が文化の伝統としてあるから、あの花に親しみを覚え、その美しさに感動する。だから余韻が生じ、うっとりする。……続きを読む

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3位
人工知能は資本主義を終焉させるか 経済的特異点と社会的特異点
書籍:人工知能は資本主義を終焉させるか 経済的特異点と社会的特異点
(齊藤元章、井上智洋/PHP研究所)
レビュアー:sawady51さん 得票数:26
書評掲載日:2019-05-07 05:44:02
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/257788/review/223686/

「シンギュラリティ・ポイント(特異点)」と資本主義

人工知能(AI)は急速な進歩を遂げている。アメリカの未来学者レイモンド・カーツワイル氏が、1960年頃から提唱してきた概念を2005年の著書で明確に整理し記したことによれば、「シンギュラリティ・ポイント(特異点)」、すなわち「人類の知性を超越する非生命的な知性」が出現し、その知性が人類の上に立つことで、われわれの想像を絶する社会の大変革が2045年頃にも起こるのだという。……続きを読む

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3位
戦後怪奇マンガ史
書籍:戦後怪奇マンガ史
(米沢嘉博/鉄人社)
レビュアー:darklyさん 得票数:26
書評掲載日:2019-05-09 21:59:09
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/277257/review/226665/

なんというマニアックな漫画評論。単なる怪奇マンガの歴史に留まらず、作品解説、時代背景、作品が与えた影響などとても濃厚です。

本書は漫画評論家の故・米沢嘉博が生前連載していた「戦後怪奇マンガ史」「恐怖マンガの系譜」をまとめたものです。

戦後からの怪奇マンガの歴史については、1960年代後半生まれの私にとっては1970年より前の作品は当然知らない作品ばかり。やっと1970年代の作品から知っているものがチラホラと出てきます。また私の両親はマンガはくだらないという当時の典型的なステレオタイプであったため、それほどマンガは読ませてもらえませんでした。……続きを読む

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3位
メドゥーサ (ナイトランド叢書3-5)
書籍:メドゥーサ (ナイトランド叢書3-5)
(E・H・ヴィシャック/書苑新社)
レビュアー:darklyさん 得票数:26
書評掲載日:2019-05-06 13:01:43
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/277140/review/226477/

幻の海洋冒険怪奇尻切れトンボ小説

「紫の雲」に引き続き「幻の作品」シリーズです。解説によると日本で「幻の作品」と呼ばれるものには二つの観点があるそうです。一つは少し前に書評を書いた「紫の雲」のように原書は手に入りやすいものの原文が難解なため長らく邦訳されなかったもの、二つ目は原書が稀覯本でありそもそも入手が困難なもの。そしてこの「メデゥーサ」はそのどちらにも当て嵌まる作品ということです。ちなみに解説者がネットで調べたところこの作品の1929年版の最高値は約13万円だったそうです。……続きを読む

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7位
飛ぶ孔雀
書籍:飛ぶ孔雀
(山尾悠子/文藝春秋)
レビュアー:Yasuhiroさん 得票数:25
書評掲載日:2019-05-11 10:30:12
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/264831/review/226742/

今読める山尾悠子の最後の作品。三冠達成とか大化けしたとか世評は高い。その通りではあるのだが、、、

引追いかけてきた山尾悠子の最新刊に辿り着きました。昨年発刊され、第69回芸術選奨文部科学大臣賞、第39回日本SF大賞、第46回泉鏡花文学賞の「三冠」を達成した「飛ぶ孔雀」です。大化けしたとか世評は高く、このサイトでもefさんはじめ、私が尊敬するレビュアー諸氏、6名がレビューを寄せられています。……続きを読む

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8位
竹久夢二という生き方 (タケヒサユメジトイウイキカタ)
書籍:竹久夢二という生き方 (タケヒサユメジトイウイキカタ)
(竹久夢二/春陽堂書店)
レビュアー:休蔵さん 得票数:24
書評掲載日:2019-05-10 10:46:36
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/276716/review/226179/

美人画を多く書き残した竹久夢二は、若かりし頃に詩人になりたかったとか。本書は夢二が書き記した詩に彼独特の絵画を合わせている。

大正ロマンの体現者のような竹久夢二。
美人画の絵描きとして有名であるが、若い日には詩人になりたい気持ちがあったそうだ。
本書は夢二がしたためた詩に大正3年に手掛けた画集『草画』にある絵画を添えて仕上げている。ここでは個人的に気になった詩を取り上げてみたい。

「泣けるときには泣くがいい
もうたくさんだというほどお泣き。
笑えるときには笑うがいい
もう笑えないというほどお笑い。
青春がだんだん過ぎると
泣くことも笑うことも
出来なくなるときがくる。」……続きを読む

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9位
歪み真珠
書籍:歪み真珠
(山尾悠子/筑摩書房)
レビュアー:Yasuhiroさん 得票数:23
書評掲載日:2019-05-10 08:32:38
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/276692/review/225673/

山尾悠子の空白の二十年間を埋める「きわめて重要なミッシング・リンク、美しく引き絞られた鯨骨のコルセットのくびれ部、否、硝子の砂時計のしなやかな結節点」と解説者は語る。なんじゃそれ、ですな。

ずるずるとはまって、またまた山尾悠子です。2000年に「アンヌンツィアツィオーネ」で20年ぶりに復活して以降の作品を集めた短編集「歪み真珠」です。諏訪哲史さんの衒学的で難解な解説によると、初期作品集「夢の遠近法」と「ラピスラズリ」以降の作品群をつなぐきわめて重要なミッシング・リンク、言い換えれば、……続きを読む

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9位
華氏451度
書籍:華氏451度
(レイ・ブラッドベリ、宇野利泰/早川書房)
レビュアー:efさん 得票数:23
書評掲載日:2019-05-11 05:48:48
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/244744/review/226853/

コンセプトは抜群なんだけれど……/辛口レビューです

随分久しぶりにこの作品を再読してみました。
私が最初にこの本を読んだのはもう遥か昔だったと思うのですが、その時はコンセプトの衝撃が凄まじかったこともあり、粗筋は今回再読する時点でもよく記憶に残っていました。

本作の舞台は、書物が禁止されているという未来社会です。
主人公は、モンターグという焚書官です。
焚書官というのは、『逆』消防士のようなもので、禁じられている書物を持っている者が発見されるとその場所に急行し、焚書車から石油をまき散らして書物に火をつけて燃やしてしまうことを仕事としている者たちなのです。……続きを読む

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